新年のごあいさつ 根岸京田理事長

東京保健生協理事長 根岸京田

人々のつながりが未来の希望
新たな一歩を踏み出そう

東京保健生活協同組合 理事長 根岸 京田

東京保健生協組合員、職員のみなさん、あけましておめでとうございます。

2020年早春からの新型コロナウイルス感染症は、まるで人々の営みを嘲笑うが如くその姿と毒性を変化させながら、2021年のほぼ1年を通じて人々を苦しめてきました。政策の誤りや遅れもあり、流行の波を迎えるごとに感染者のピークが高くなる状況です。
この原稿を書いている2021年11月中旬は、第5波を乗り越え、東京の1日の新規感染者数が20名前後と落ち着いている時期ではありますが、第6波襲来の懸念が払拭されたわけではありません。

ワクチンの普及や新たな治療薬の導入などが進んでおり、2021年前半のようなウイルスへの対抗手段がない状況よりは随分と改善されましたが、それにしても「ゼロコロナ」を達成するのは困難であり、どんな時でもマスクを着用するユニバーサル・マスキング、三密を避ける、換気をするといった新しい日常は当面続くと考えられます。

昨年のコロナ禍を振り返る

経営環境は相変わらず厳しい状況ですが、コロナの補助金もあり2021年度は黒字を確保できそうです。しかし、補助金頼みの経営を続けることはできません。コロナをきっかけに医療・介護のあり方が大きく変わる(変えられる)可能性があり、その動向をみすえて事業所運営をしていく必要があります。
例えば公的病院の整理統合、地域の医療機関の役割分担、医療と介護の一体化、小規模事業所の統合など、厚労省が数年かけて計画してきたことをコロナを契機に一気に進めようとしているような印象があります。必要な発信を現場から行うとともに、時流に乗り遅れないように情報収集と対応策の検討が必要です。

医療福祉生協活動の面では、2021年9月まではほとんどの活動ができず、歯がゆい思いをされた方も多かったのではないでしょうか。第5波の収束に伴い、徐々にではありますが地域の活動が再開されてきたことは誠に喜ばしいことでした。

今こそ医療福祉生協の出番

さて、この長く辛い自粛期間を経験し、人々がつながることの重要さを改めて感じられたのではないでしょうか。新型コロナウイルスによる直接の健康被害だけでなく、人と人との直接のコミュニケーションが難しくなる中、さまざまな健康二次被害が明らかとなっています。運動量が減って体重が増え糖尿病や高血圧の数値が悪化するなどの疾病の悪化、外出の機会が減ることによる下肢の筋力低下、人と話すことが少なくなるための口腔機能低下やうつ状態の進行、食事の回数が不規則になることによる栄養状態の悪化などです。

元々フレイルの要素のある方にそれらの因子が加わってさらにフレイルが進行するという「負のスパイラル」に陥ってしまう方を外来で見かけます。外出する習慣や散歩したり人と話したりする習慣を一度やめてしまうと、個人で再開するのにはそれなりの努力が必要です。一方で、誰かが誘ってくれると容易に再開できることもしばしば経験します。そういう時に医療生協の関わりが重要だと思います。ぜひ、周りの人を大いに誘って生協活動を再開させ発展させていきましょう。

現在進行中の8次中期構想キャッチフレーズは「人につなげる、生きるにつなげる、未来につなげる」です。人と人とが支えあい、医療・介護施設と行政、保健所などが連携して生活を下支えすることで、誰もが住み続けられるまちづくりが可能となります。医療生協のつながりが地域のまちづくりを支えるネットワークの一翼を担えるように今年も奮闘しましょう。

東京保健生協60周年を記念して

2021年10月の総選挙では、政権与党は議員数を減らしたものの政権交代をもたらすほどの変革は起きませんでした。岸田首相は選挙前の公約として「新しい資本主義」を掲げ、行き過ぎた新自由主義を是正すると公言しています。小泉首相の構造改革以来の新自由主義的政策は、人々の行為を全てお金に換算し、効率性とスピードを重視することを強いて来ました。その結果、人々の心まで経済優先、効率優先に毒されています。困窮する人たちへの共感、人が人を慮(おもんばか)る心、他者への優しい眼差しなどが大きく損なわれたのではないかと思います。新型コロナ感染症の拡大がその傾向に拍車をかけています。

コロナにかかってしまうリスクは誰にでもあるのですが、それを「自己責任」と考える人の比率が、日本は先進国の中でも突出して高い状況にあります。他者への共感が、医療生協運動のみならず全ての住民運動の基本です。時代と共に変わり変えられつつある人の「ココロの問題」も私たちの課題の一つです。人々のつながりに未来への希望を持ちながら活動を広げていきましょう。

今年は東京保健生協発足の60周年、大泉生協病院開院と老健ひかわした開設の20周年にあたります。コロナの感染状況が気になるところですが、何らかの記念行事を計画したいと考えています。今年も東京保健生活協同組合をどうぞよろしくお願いいたします。