病気Q&A「非アルコール性脂肪肝炎(NASH)」

回答者 東京健生病院 消化器内科 木村 佳苗 先生

(聞き手 編集部)

Q 非アルコール性脂肪肝炎とは

A C型肝炎などのウイルス性肝炎は治療薬の進歩などにより治る疾患となってきました。一方で患者数が増えてきているのが、食習慣の欧米化(脂肪摂取量の増加)や運動不足などにより肝障害を引き起こす非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)と呼ばれる病態です。
現代人の約20%〜30%がNAFLDに罹患しているとの報告もあり、その中の約10%が病態の進行した状態の非アルコール性脂肪肝炎(NASH)になると言われます。

NASHとは、肝臓に脂肪が貯まるだけでなく慢性的な炎症が起こることで肝臓が繊維化し硬くなっていき、最終的に肝硬変や肝癌に進行する危険性のある病気です。

Q NASHの進行とその原因

A お酒を大量に飲むことで脂肪肝になることはよく知られています。一方、お酒を飲まない方でも検査で脂肪肝や肝機能異常が認められることがあります。単純な脂肪肝からNASHへの進展には内臓脂肪型肥満脂質異常、インスリン抵抗性などによる糖尿病、遺伝的要因など、さまざまな原因が相互に作用し肝臓に炎症を来たして肝臓の繊維化が進行します。繊維化を防ぐ薬は現時点では確立されていません。

Q NASHの診断

A 非アルコール性とする飲酒量の上限はエタノール換算では男性30g/日、女性20g/日(ビール500cc、お酒1合、ワインではグラス2杯)程度になります。腹部超音波検査や肝臓CT検査で脂肪肝を認め、血液検査で肝障害を認めた場合はウイルス性、アルコール性、薬剤性、自己免疫性などによる肝障害を除外します。

確定診断は肝臓の組織検査によります。しかし、肝生検には費用もかかり、出血や疼痛など合併症もあるので、肝繊維化の進行が疑われる場合などに限られます。
飲酒習慣が無く脂肪肝と言われた場合は、通常の血液検査の結果で肝臓の繊維化を予測する方法があります。Fib-4indexと言い、健診や日常診療で測定されるAST、ALT、血小板、年齢を計算式に当てはめることで知ることができます。(1.3未満で低リスク、2.67超で高リスクと判定)この数値が高いと要注意です。また、血液検査で繊維化マーカーを測定することも有用です。

Q NASHの治療法

A 残念ながら内服ですぐ効く様な薬はまだできていません。

メタボリック症候群に伴う、肥満、糖尿病、高血圧症、脂質異常症を合併することが多いので、これらの病気に使用される薬での治療になります。また、食事や運動療法などで適正な体重に持ってゆくことがとても大切です。体重を7%減量することで脂肪肝は改善されるとされています。

Q 気をつけること

A 健康診断を受けた人の内、脂肪肝になっている人の割合は25%を超えていると報告されています。気が付かないうちに脂肪肝になり肝障害が続くと肝硬変や肝臓癌へ進んで行きます。過食を避けてバランスの良い食事を心がけ、適度な運動を習慣とし、適正な体重を維持してゆくことが大切です。また、健診で脂質異常、血糖異常、肝障害などを指摘された場合は放置せずに医療機関を受診することが大切です。