健診のススメ 肝機能検査

大泉生協病院 検査科 岡田 直美 ・ 大泉生協病院 放射線科 越崎 浩晃

健康診断で肝機能を測定するには、血液検査やオプションでの超音波検査があります。
肝臓は沈黙の臓器と言われ、障害があっても自覚症状が出にくいので、定期的な健診をしてください。

肝臓の機能と肝機能検査

肝臓には、大きく下記の3つの機能があり、肝臓内で様々な化学反応を起こしています。そのため肝臓が過負荷やウイルスなどで機能を保てなくなると、血液中の肝臓の働きに関わる酵素が基準値から外れてしまいます。血液検査では肝機能に関わる検査項目を総合的に判断します。

肝臓の主な機能
  1. 1 肝臓は胃や腸で分解、吸収された栄養素を貯蔵・分解します。
  2. 2 お酒のアルコールやたばこにふくまれるニコチンなどの身体に悪いもの中和します。
  3. 3 脂肪を消化するために必要な液体(胆汁)を生成・分泌します。
肝機能検査

【血液検査】

検査項目

基準値

反映している肝機能

AST(GOT)

10~40 u/L

肝細胞の壊死を反映しています。
本来、肝細胞内に存在し肝細胞の破壊により、血清中に放出されます。

ALT(GPT)

5~42 u/L

LDH

124~222 u/L

総ビリルビン

0.20~1.10 mg/dL

Alb(アルブミン)

3.8~5.2 g/dL

肝細胞の合成能障害を反映しています。肝細胞内での合成能が低下すれば、血中濃度も低下します。

γ - GTP

男性10~80 u/L
女性10~40 u/L

タンパク質を分解する酵素で、肝臓・腎臓・膵臓に障害がおこると血中に流れてきます。また、アルコールに敏感に反応し、お酒をよく飲む人では数値が上昇します。

超音波検査でわかること

腹部超音波検査では、肝臓の大きさや形、コントラスト(通常時や他の臓器との対比)などを観察しています。
肝臓の大きさには個人差はありますが、肥大して(大きくなって)いる場合は、肝炎をはじめ様々な病気が原因と考えられ、萎縮して(小さくなって)いる場合は、主に肝硬変などが原因として考えられます。肝臓の病気は、他の臓器とのコントラスト(対比)でもわかることがあります。例えば、腎臓に比べて肝臓が明るく(超音波の画面上で白っぽく)描出された場合は、脂肪肝である可能性が高いです。

また、形については主に肝臓の辺縁へんえんを見ています。鋭い部分が鈍化していないか、滑らかな部分がボコボコしていないかなどを見ています。仮に形に変化が見られた場合も、肝障害などが疑われます。
このように超音波検査では、病気はもちろんのこと、肝臓の状態を知ることができます。

ちなみに、肝臓の検査にはCT検査やMRI検査もあります。
CT検査やMRI検査は、肝臓も含めて腹部全体を把握するには向いている検査です。しかし、超音波検査は小さな病変の検出能力が高く、被爆などのリスクもない為、他の検査に比べ、気軽に受けることができる検査だと思います。

超音波検査の受け方

健診のススメ 肝機能検査腹部超音波検査は、肝臓以外にも胆嚢、腎臓などお腹に関する臓器を観察します。
その為、検査前に食事をしてしまうと、腸内ガスが出てその影響で見えづらい部分が出てきてしまいます。検査時間によって、どの食事を止めなければならないのか指示があるので、その通りに食事は我慢しましょう。