新型コロナウイルス感染症 2023年5月8日より5類へ

感染症法の2類相当から5類へ変更でどうなる?

大泉生協病院 院長 齋藤 文洋
大泉生協病院 院長 齋藤 文洋

2020年1月に新型コロナウイルス感染症(COVID-19:以下新型コロナ)が日本に入ってきて3年余。この感染症、恐ろしい感染症から身近な感染症に変わろうとしています。

この感染症の実際の始まりは、中国武漢で2019年12月。その後の調査では同年11月には発生していたのではないかと言われています。
私は2019年12月27日、SARSに似た新しい感染症が中国で発症したことを知りました。それからほぼ3ヶ月後の2020年3月3日、大泉生協病院では発熱外来を開始、3月4日には第一例目の新型コロナに遭遇します。私たち医療従事者であってもこの目に見えない暴れ者には足が震えました。

そして感染症法上「指定感染症」に。この時「2類相当」とされ、その後の法律改定により新型インフルエンザ等対策特別措置法における「新型インフルエンザ等」に含まれることとなり、指定感染症から移行、感染症法上は2類相当が維持されました。この「特措法」上の扱いには期限付きであったため2回の期限延長が行われ、現在は無期限の状態になっています。そして、この特措法に基づく「緊急事態宣言」とまん延防止等重点措置法により、国民の生活の制限が公認され、実際に発令されたのは皆さんも周知のことでしょう。もちろんこれには「国民の自由と権利の制限は、必要最小限のものとすることなどを求める」付帯決議もありますが...
一方、この一連の法的経過とは別に、予防接種法により新型コロナウイルスワクチン接種が2021年春から施行されてきました。

そしていよいよ2023年5月8日、新型コロナは感染症法上の5類になることになります。まん延防止等措置は2022年3月21日にすでに終了しています。そして特措法自体適用されなくなります。

なぜ5類感染症へ

5類感染症とは「感染力や重篤性などに基づく総合的な観点からみた危険性が最も低いとされるもの」とされていて、現在指定されている代表的感染症には季節性インフルエンザ、百日咳、風しん、麻しん、梅毒、破傷風、後天性免疫不全症候群(HIV/AIDS)などがあります。名前は皆さんもよくご存知のものがほとんどで、「ごく身近な」だけど見過ごせない感染症です。
これら感染症は感染者数を把握するため全数把握(全医療機関が届出)または定点観測(特定の医療機関が届出)され、インフルエンザは定点観測、百日咳、風しん、麻しんなどは全数把握疾患です。今回新型コロナは「定点把握5類感染症」になる予定です。

気になるのは「危険性が最も低い」というところでしょう。
令和4年12月21日第111回新型コロナウイルス感染対策アドバイザリーボードに提出された資料「新型コロナの重症化率・致死率とその解釈に関する留意点について(別紙2)」という資料によれば、インフルエンザとの比較ではまだ危険性が最も低いとは言い切れないかもしれません。この資料の作成からすでに半年以上経っており、さらに軽症化しているのは確かですが類似した資料がありません。
令和5年3月23日第119回アドバイザリーボードでは全国の抗体保有率が示されました。これはワクチンの影響は受けずに実際にコロナに感染したかどうかを見るN抗体を献血時の血液で測ったものです。それによると全国の平均が42%程度、東京もほぼ同様。症状の有無に関わらず、これだけの方がすでにコロナに感染しているということです。ワクチンによる抗体保有率はこれを上回ることが予測されますので、半数以上の国民はそれなりの感染抵抗力をすでに持っていると思われます。新型コロナでは全体の6〜7割の方が抗体を持てば集団免疫が成り立つと言われますので十分な抗体保有率と言って良いでしょう。

そのような状況で、2類感染症・新型インフルエンザ等感染症というほどの重篤な感染症ではないものの、インフルエンザと全く同等というにはまだ少し早い、そんな位置付けです。
今の法律の枠組みでどこに入るかといえば5類しかない、そのような分類と考えてください。

これからの感染対策は?

実際、高齢者が新型コロナにかかってもそう簡単には重症化せず、普通の風邪で終わるのですが、「弱っている」と危ない感染症。ですから「人に感染させてしまいそうな環境」に行くときはマスクをするのが望ましいでしょう。
マスクの本来の意味は「うつさない」です。コロナは自覚症状がなくても罹っている可能性がある感染症なので、自分が人にうつさない事が重要です。

感染症に対する対策としてはワクチンも一つの方法です。しかし残念ながら「うつること」は予防できません。罹っても重症化しないことが目標です。ですから「うつると大変」なことになりそうな人は予防接種を受けることが望ましいでしょう。
このような方々の予防接種については2023年度も公費で接種が可能です。また、11歳以下の子ども達のワクチンは開始が遅く、まだ接種が進んでいないことから2023年5月8日以降も同じ接種体制が継続されます。厚生労働省「令和5年度 新型コロナワクチン接種についてのお知らせ」【外部サイト PDF】をご参照ください。

最後に、新型コロナウイルスの名称は5月8日以降もしばらく変更はないようです。そして大泉生協病院の発熱外来は2023年3月31日、一足早くその役割を終えました。