病気Q&A「腎不全と人工透析」

回答者 東京健生病院 内科 崔 啓子 先生

(聞き手 組織部)

Q 腎臓の機能は何ですか?

A 一言で言うと「尿により体の中の環境を一定に保つ」ことです。
私達は毎日さまざまなものを食べたり飲んだりしますが、腎臓では尿として不要なものは排出し、必要なものは保持することで、体の中を一定の状態に維持しています。

腎臓は1日を通して大量の血液をろ過して1日に尿の元を180Lも作り出した後、99%以上を再吸収するという、一見非合理的なシステムを持っています。
体の中の水分や、必要な成分(ナトリウム、カリウム、カルシウム、リンなど)は多すぎても少なすぎても体に良くありませんが、この腎臓のダイナミックな仕組みによって良い塩梅に調整されています。

また、他の臓器(心臓や骨など)と「対話」をするのも腎臓の特徴です。例えば、心臓と連携して貧血を予防したり血圧を管理したりします。いわば体、特に血液の「管理人」が腎臓です。

Q 腎臓の病気はどのようにしたら分かりますか?

A 腎臓は機能が10%以下になっても症状が出ないことも多く「沈黙の臓器」とも呼ばれます。
早期発見には血液検査(クレアチニン、eGFR)と尿検査が必要です。これらは職場健診や自治体健診に含まれています。ただし糖尿病の場合はもう1つ検査が必要です。それは「アルブミン尿」です。健診の項目には含まれておらず病院で調べる必要があります。

腎臓病は進行が早いものからほとんど進行しないものまでさまざまなパターンがありますが、尿たんぱくが多い場合は要注意ですので医療機関の受診をお勧めします。
腎臓の中のろ過装置は再生しないため、一旦悪くなると大幅な改善は見込めません。残っているろ過装置を守るのが腎臓を悪くしない最善の方法です。

Q 腎不全とは何ですか?

A 腎臓の機能が弱くなって正常の30%以下になり、腎臓の機能調整がうまくできなくなった状態を言います。
腎不全は心筋梗塞や脳卒中といった心血管病のリスクがとても高くなります。末期腎不全に至り透析が必要になるよりも先に心血管病を起こすことが多くあります。そのため、腎臓を守ることは命を守ることにもつながります。

Q 腎不全の治療で気を付けることは?

A 腎不全の治療は、元々の病気(糖尿病や高血圧、糸球体腎炎など)に対する治療と、すべての腎臓病に共通する治療の2つに分けられ、どちらも重要です。
食事療法で大切なのは塩分を控えることと適切な量のタンパク質の摂取です。タンパク質の取りすぎは腎臓に負担を与えますが「取らなさすぎ」も良くありません。取らなさすぎると体のタンパク質、特に筋肉を分解して不足分を補おうとするため筋肉量が減りかえって寿命が短くなると言われています。

腎臓への悪影響を避けることも大切です。鎮痛剤の使い過ぎ、脱水、熱中症、下痢、風邪などがそれに当たります。肥満、喫煙、コレステロール、尿酸値の改善も重要です。また腎臓は大量の血液を処理するため酸素の需要が多く、病院での貧血の治療も大切です。

Q 人工透析って何ですか?

A 腎臓の機能が15%以下で腎不全の症状があるとき、また症状がなくても6%以下になった場合は腎臓の機能を補う治療が必要です。これが人工透析です。
人工透析の方法は血液透析と腹膜透析があります。血液透析は週3回病院で行います。腹膜透析は主に自分で行う方法です。腎不全の治療法には腎移植もあります。

Q 腎不全の予防に大切なことは何ですか?

A 腎不全にはさまざまな原因がありますが、新たに人工透析を始められる患者さんの中で最も多いのが糖尿病です。また最近は高血圧が原因の腎硬化症の患者さんも増えています。特に高齢の方では腎硬化症の患者さんの割合が多くなっています。少なからず遺伝性の疾患の場合もあります。

Q 医療費補助について

A 人工透析は高額な治療ですが、特定疾病療養受療証や特定疾患医療助成制度(東京都のみ)などの助成制度により、人工透析に関わる医療に関しては自己負担ゼロ〜月額1万円になっています。
詳しくは医療機関のソーシャルワーカーや区の窓口へご相談ください。

病気Q&A「腎不全と人工透析」

東京健生病院では、8床の透析に対応できる病床がございます。
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