病気Q&A「痛風について」

回答者 セツルメント菊坂診療所 所長 福間 祐美子

(聞き手 編集部)

Q そもそも痛風とは?

A 「痛風」とは文字通り「風が当たっても痛い」病気です。結晶化した尿酸が関節に沈着して急性関節炎を起こし、赤く腫れあがって激烈に痛みます。好発部位は足の親指の付け根ですが、他の関節にも生じます。

歴史は古く、アレクサンダー大王、ルイ14世、ナポレオン、レオナルド・ダ・ビンチやダーウィンなど西洋の多数の偉人が痛風に苦しんだと伝えられています。古代エジプトのミイラの関節に尿酸の結晶が発見されたとの報告もあり、最古の生活習慣病とも言われます。

日本では明治時代の患者数は100例にも満たなかったのが、2019年の国民栄養基礎調査では痛風患者が125万人、その原因となる高尿酸血症患者は1000万人に上り、食生活の欧米化やアルコール摂取量の増加を反映して近年急増していることが分かります。痛風患者の9割以上は男性で、高尿酸血症は成人男性の約30%に認められます。

痛風患者数の推移

国民生活基礎調査を基に日本痛風・尿酸核酸学会が算出

病気Q&A「痛風について」 出典:2020年12月8日 東京新聞より

Q よく聞くプリン体とは?

A「プリン体ゼロ!」というビールのCMがありますが、プリン体とは何でしょうか?
プリン体とは、細胞の核の中にある成分です。食品に含まれるプリン体と、私たちの体の細胞に存在するプリン体から新陳代謝の結果生じる老廃物が尿酸です。尿酸は作られた分が尿や便から排泄されますが、バランスが崩れ尿酸が増加して、血清尿酸値7mg/dl以上の状態を高尿酸血症と言います。
原因は尿酸の産生過剰または排泄低下、これらの混合型と考えられ、一番多いのが腎臓からの排泄低下型です。

高尿酸血症は痛風だけでなく尿路結石や慢性腎臓病、動脈硬化の原因ともなります。また高血圧、糖尿病、脂質異常症などの合併が多くみられます。内臓脂肪型肥満では尿酸の排泄が抑制され、尿酸値が上がります。

Q どうやって治すの?

病気Q&A「痛風について」

A 治療としては、生活習慣の改善が重要です。プリン体が多い食品としてレバーや白子、干物、エビ、イワシ、カツオなどが有名ですが、プリン体はあらゆる食品に含まれるので、過食を避けることが大切です。肥満の方は減量に努めましょう。

ビールにはプリン体が多く焼酎には少ないと言われますが、種類を問わずアルコール自体がプリン体の分解を早め、さらに尿酸の排泄を抑制するため尿酸の上昇を招きます。またアルコールの利尿作用で脱水になると、尿酸の結晶や尿路結石ができやすくなります。
ビールなら500ml、日本酒なら1合、焼酎なら100mlまでが目安です。おつまみはプリン体の宝庫であることもお忘れなく。
脱水の予防と尿酸の排泄のため、1日2リットル以上を目安に水分をとりましょう。ストレス解消や減量のため適度の有酸素運動も効果的です。

薬剤治療としては尿酸生成抑制薬や尿酸排泄促進薬を、患者さんの腎機能や合併疾患、尿路結石の有無などを勘案して処方します。血清尿酸値6mg/dl以下を維持することが目標です。痛風発作は予防が重要ですが、不幸にして発作に見舞われた場合は、まず非ステロイド性抗炎症薬やコルヒチンという薬で炎症を抑えてから薬剤で尿酸値をコントロールします。
痛風発作は夏の初め(汗をかいて脱水になりやすい)や年末年始(ついつい暴飲暴食)の時期に多いと言われます。これからの時期、痛い思いをしないようくれぐれもご注意下さい。