病気Q&A「大人の食物アレルギー」

回答者 大泉生協病院 医師 井上 照大

(聞き手 編集部)


皆さんはアレルギーというと何をイメージするでしょうか。
この時期ですと、今や国民病である花粉症を思い浮かべる方が多いかもしれません。しかし、近年は花粉症に並んで食物アレルギーも増えていると言われています。
食物アレルギーというと子どもの頃に発症する疾患という印象があるかもしれませんが、大人になってから発症する方も多くなっており、
ある調査では成人の12%の方が何らかの食物アレルギーがあると自己申告しているそうです。

Q アレルギーとは?

A まずアレルギーとは何かと言うと、危険のある異物から体を守る免疫反応が危険のない物質をあやまって危険だと認識して過剰に反応し体に不利益な症状が出現することです。
アレルギーの原因物質をアレルゲンと言います。食物アレルギーは、食物がアレルゲンとなってアレルギー症状が出現することです。症状は次の3つのタイプに分けられます。

(1)即時型症状は原因となる食物摂取後2時間以内に起こることが多いとされており、一番多い症状は赤みやかゆみ、じんま疹などの皮膚症状です。
次いで、のどの違和感や息苦しさなどの呼吸器症状、目や口の中の浮腫みなどの粘膜症状、気持ち悪さや腹痛、下痢などの消化器症状、血圧低下などの循環器症状があります。
最も重症なのはこれらの症状が複数同時におこるアナフィラキシーです。命にかかわるショック症状になることがあり、緊急で処置が必要となります。

(2)食物依存性運動誘発アナフィラキシーは原因となる食物摂取後に運動をすることで、腸からアレルゲンが吸収されやすくなり、アナフィラキシーが発症する疾患です。

(3)口腔アレルギー症候群は原因食物を摂取した後に唇や口の中のかゆみや腫れが出現する疾患です。カバノキ科(シラカバなど)の花粉症のある方が、バラ科の果物(リンゴ、サクランボ、モモ、イチゴなど)を摂取した際に引き起こされることがあります。

病気Q&A「大人の食物アレルギー」

Q アレルギーを発症しやすい食べ物や傾向は?

A 食物アレルギーの定義や分類について解説しましたが、次にアレルゲンとして多い食物を挙げていきます。
小児で多いのは鶏卵や牛乳、ナッツですが、大人で最も多いのは果物類です。これは花粉症が関係しています。先にも述べましたが、特にカバノキ科の花粉症とバラ科の果物はアレルゲンの構造が似ているため、カバノキ科の花粉症のある方はバラ科の果物でアレルギーをきたしやすくなります。花粉だけでなく天然ゴム(ラテックス)のアレルギーのある方は、バナナ、アボカド、キウイなどに注意が必要です。

果物類の次に多いのが小麦です。小麦については、食物依存性運動誘発アナフィラキシーが成人小麦アレルギーの多くを占めると言われています。他には甲殻類やスパイス、ナッツなどが続きます。

Q 食物アレルギーがある場合の対応は?

A 1つ目の対応は原因物質の除去です。ただ、これについては完全な除去を目指すと栄養や生活に問題が出てしまうことがあるので、これまでの自身の経験で「これくらいなら食べて大丈夫」とある程度判断するしかないかもしれません。2つ目の対応としては、もし食べてしまい症状が出現したときの備えをしておくことです。症状が軽い場合はアレルギー症状を抑える抗ヒスタミン薬の内服でよいかもしれません。アナフィラキシーなどの重篤な症状が出現したことがある方はアドレナリン自己注射薬(エピペン ®)を処方してもらい、常に持ち歩くとよいでしょう。小麦による食物依存性運動誘発アナフィラキシーがある方は、運動前に小麦を含む食品を摂取しないようにしましょう。

食物アレルギーの発症には、以前よりアトピー性皮膚炎や気管支喘息などのアレルギー体質、花粉症などの関与が挙げられてきました。しかし、それだけではなく食生活の乱れやストレスといった生活習慣、環境、職業など様々な要因の関与も示唆されています。生活習慣を整えることで、もしかしたら症状の改善につながるかもしれませんね。

参考文献:福冨友馬「大人の食物アレルギー」集英社新書